第29章 不安なんです。
風邪で寝込んでいた俺はぐっすり眠ったことによってすっかり普段通りに体調が戻っていた。
「……何故、華菜がいる?」
目が覚めての俺の第一声はそれだった。
『兄貴、起きてる……?』
(美月か?)
扉越しに声をかけてきた美月に俺は返事をする。
「あぁ。 起きてるぞ」
俺がそう言うと美月は「じゃあ、入るわね?」と、言いながら部屋のドアを開けて俺の部屋に入ってきた。
そして、遠慮がちに声をかけてくる。
「あの……兄貴……」
「……どうした?」
いつもと雰囲気が違う美月を不思議に思いながら俺は返事を返す。 すると美月はいきなり頭を下げて謝ってきた。
「ごめんなさい……」
美月の行動に疑問しかなかったのだがふと、思い出す。
(あぁ。 もしかして、昨日俺に水を浴びせたことか?)
「べつに構わない。 昨日のことに関しては俺のほうも悪かったからな……」
俺がそう言うと美月は頭を左右に振り否定をし、言った。
「違うのっ‼︎」
「違う……?」
(美月が言っているのは昨日のことではないのか……?)
なら、一体何に対しての謝罪なんだ?
「私……彼女に……」
(彼女……? 華菜のことか?)
「華菜が、何だ?」
俺がそう問うと美月は一瞬躊躇って口を閉ざしたが一呼吸おいてから口を開き言う。
「私、彼女に"変態兄貴には気をつけなさい"って言っちゃったの……」
「そのことを何故謝る……?」
(そんな些細なことを気にして謝るなんて美月らしくもない……)
「だって……」
「美月がそんなことで謝るなんてらしくもない。 それにお前がそう言ったのは華菜を思ってなんだろ?」
俺がそう言うと美月はまた左右に頭を振った。