第181章 〜後日談〜特別なハジメテ〜※R18
キッチンで繰り返されるキス。
まだ「ハジメテ」に、
心の準備が出来ていなくて……
拒む自分がいる。
「ま、待って……まだ…」
「……帰したくない」
キスの合間に注がれる、真っ直ぐな瞳。
それに吸い込まれる。
家康は私の手を捕まえて……
「好きだから触れたい」
頬に添えてそう囁く声は、いつもの家康じゃない。男の人、特有の低い声。でも低いだけじゃなくて、甘さも含まれていて……
「教えてあげる。俺にとって、ひまりがどれだけトクベツか…」
偽りなんて一切ないと言うような、真剣な瞳に……嬉しさと緊張で身体が硬直する。
「この唇も…どれだけ触れても足りない」
顎を持ち上げられて、ゆっくりと口を割って滑り込む舌。くちゅと絡み合う音に、少しずつ頭が溶けていくような気がして……
「……んんっ……んっ」
「……ひまり」
名前一つ呼ばれるだけで、身体中が小刻みに震えだす。
(だ、…め……チカラが……)
次第に自力で立てなくなくなり、ストンと崩れ落ちる前に家康が支えてくれた。
「……そ、んな可愛い顔されたら。ますます帰せない」
もう、耳だけじゃなくて胸まで熱くなってきて。また、すぐに唇は塞がれ……激しく口内を犯す舌の動きを、たどたどしく受け止めはじめる自分がいて……
何も考えられなくなる。
「はぁッ……」
やっと離れた唇。
いっぱい息を吸い込んだ瞬間、声が漏れ、ついに床にペタリと座り込んでしまう。
荒い呼吸を繰り返して、家康の頭にしがみ付くとふわっと身体に感じた浮遊感。
熱に逆上せたように朦朧とした意識の中、トントンと階段を登る足音。それを、何処か遠くのように聞いて……
(このままだと、部屋に……)
ガチャッ……。
扉が開く音は物凄く近くから感じて、ぎゅっと家康の首に腕を絡ませた。