第178章 〜本当のはじまり〜
朝を迎えても、
気づけばまた書物を開いていた。
そして……
携帯に表示された時間を見て、
慌てて閉じる。
「もうこんな時間!遅行する!」
今日からテスト期間に入るのに!
大急ぎで制服に着替えカバンを掴む。オルゴールの中にちゃんと、三つ葉の指輪が入っているか確認して……
くまたんに挨拶してから、階段を一気に駆け下り玄関で靴を履く。
朝ご飯は〜?と母親に聞かれ、私はふわふわオムレツを横目に、時計と睨めっこをした後……首を振ってお弁当だけ受け取った。
「行ってきまーーす!」
三つ葉のヘアピン付けて。
お気に入りのリップを付けて。
山茶花のヘアオイルを付けた私は、
勢い良く外に飛び出した。
「………寝坊?すっごい寝癖」
「ちょ、ちょっと本を読んでたら夢中になっちゃって……えっ!寝癖?どこどこ??」
今朝ちゃんと、
チェックしたはずなのに。
私は目を上に向けて、手で髪を押さえようとした時……
「………嘘」
ってか、
本じゃなくて書物でしょ?
耳元でそう、ボソッと囁かれた。
図星を突かれ、うっ。と押し黙る私。
「もう!家康の嘘つき!!」
「すぐ人を信用する、バカひまりが悪い」
幼馴染から恋人同士になっても、
私達は相変わらず。
でも……
家康は一歩先じゃなくて、ちゃんと私の歩調に合わせてくれて……
「ほら、手……」
手はしっかり繋がったまま。
「昨日、言い忘れたけど幸村から何か封筒預かった」
「え……?あ!大会の時に話してたヤツかな?持ってきてくれたの?」
そう尋ねれば、何故かニヤリと笑う家康。何でそんな顔するんだろう?私は目をパチリとすれば……
繋いだ手が引かれ、腰に腕が回る。
「テスト、終わったら……」
俺の部屋に取りにおいで。
(え……?家康の部屋??)
ちゅっ。
キョトンとすれば、不意にキスされて……
「ちゃんと、覚悟して?」
その言葉の意味が分かった瞬間。
「ぜ、絶対いかないもん!///」
私は抗議するように、キッと睨んでプイッとそっぽを向く。すると「顔真っ赤にして、朝から何考えてんの?」とか、わざと揶揄ってくる。