第172章 涙色の答案用紙(35)修学旅行編
二つ目のミッション___
『鬼屋敷ー恐怖を乗り越え、出口へ向かえ』
(肝試しって、肝を試せってことなのかな……)
入り口の真上に、恐怖心を煽るように少し傾いた看板。
(も、もうダメ……)
それ見ただけで、既に足が竦む。
恐怖…その文字を見ているだけで、身体が固まって涙がじわっと、出そうになる。
繋がれた手。
とてもそのぬくもりだけじゃ、無理。
私は、恥ずかしいとかまだ、ちゃんと返事してないのに、とかもうどっかに置いてきて……
ぴとっ。
家康の腕に掴まって、顔を埋めた。
出来れば耳を塞ぎたい。
でも、手を離した瞬間……ミッションが即終了と聞き、せめて視界だけでも隠す。
「……入るよ」
家康は私の手をぎゅっと握り、合図。
声は出さず、コクコクと腕越しに伝わるように頷く。
「効果音も特になし。何、この屋敷」
家康の疑問じみた声が響く。
(早く出たいよ……)
もう頭の中はそれで一杯。
おばけ屋敷なんて、人生の中で一度しか入った記憶がない。
ギシッ。
家康が歩けば、
それにつられて私も足を動かす。
まるで、結婚式でバージンロードを花嫁が歩くように一歩、また一歩。木板の地面なのか、目を瞑っててわからないけど……足から伝わる感触と。
ギシッギシッ。
歩く度に軋む音を聞く所、それっぽい。
「はぁ……。あのさ……そんなんだと出るのに、一時間ぐらいかかるんだけど」
「だって、怖いんだもん」
小学生みたいな言い方。
自分でも、高校生にもなって情けないとは思う。でも、雷とお化け系は頑張っても克服出来そうにない。
「今んとこ、ただ薄気味悪いだけ」
「合宿の時みたいに、急に出てくるかも……」
「話している間に、気が紛れるから。それに、暗闇に目。慣らしとかないと、何かあった時、危ないけど?」
ただでさえ、ドジだと言われ……。
つい、昨夜のことを思い出す。
まだ、心に残る不安。
私はピタリと足を止めて、目を開ける。