第172章 涙色の答案用紙(35)修学旅行編
二人は鬼兵士達に追われながら、
第一チェックポイントに到着。
橋の手前……
そこに居たのは……
「秀吉先輩!どうしたんですか!?その格好!!」
「どうしたもこうしたも、『豊臣秀吉』の扮装じゃないか。なかなか様になってるだろう?」
バッチリ鎧まで着用。戦国武将に扮装した秀吉は、戦国プリンスの名にふさわしい爽やかな笑顔を浮かべ……ひまりに向けてウィンクを一つ。
驚きながらも、ひまりがコクリと頷く隣で、家康は迫る馬の足音を耳に入れ、急かした。
「話は後で良いですから、とりあえず的は何処ですか?」
「そう急かすなって、少しは楽しむ男の余裕ぐらい見せろ」
「家康!迫って来たよ!!」
「早くして下さい!」
秀吉はやれやれと肩を上げ、顔の横でパチンと指を鳴らすと……
ゴゴゴゴッ!!
すると……
橋の横に、動く的が現れた。
上下に動く的、左右に動く的、グルグル回る的。
「なっ!!」
「どうする?家康。降りている暇はないぞ?」
迫り来る、背後からの馬の足音。
手綱を持ったままでは射ることは、
出来ない。家康は悩む暇もなく……ひまりの体をヒョイと持ち上げ、馬に跨せる。
「手綱持ってて」
「え!?む、無理だよ!」
「必ず、決める」
家康は弓を構え、追っ手が来たら手綱を引っ張って、馬を動かすようにひまりに伝えた。
「俺もひまりを信じる」
真剣な家康の表情に、ひまりは頷き、手綱を取る。
秀吉はそんな二人を、微笑ましい眼差しで見つめる。弓道部の部長、副部長としての信じ合う心、支え合う心。
それを学んで欲しい。
家康は、
あっという間に二本決めたが……
「まずは、姫を捕まえろ!!」
周りを囲まれた。
「ど、どうしよう!」
「くそっ……ひまり。選手交代」
家康は弓矢をひまりに渡し、手綱を取る。
「え!?あのグルグル回ってる的!?」
「ひまりなら、出来る。一旦下がって逃げるフリするから……その後、的に向かって真っ直ぐ走る」
じりじり迫る敵。
家康はひまりが落ちないように、ガッシリと片腕を回して手綱をグッと引く。