第165章 涙色の答案用紙(29)修学旅行編
赤い車の中___
心と頭、着物に染み込みはじめた雨。
車に乗り込んで早々、ぶん殴られた。
「目を離すなと言ったはずだ」
ほんと俺は最後まで、何やって。でも、お陰で目が覚めたように思い出した。
今のひまりが行きそうな場所「赤い橋」
(さっき、その近くにいた……)
すれ違いばっか。
想いも時間も行動も。
でも、今なら見えるひまりの姿が。
昼間、既に願掛けをした可能性もある。
けど、ひまりはそこにいる。
俺と約束したから。
「一緒に渡ろうね!約束!」
「約束なんかしなくても、そのつもり」
(必ず守る。約束も、ひまりも)
二度と傷つけたくなくて。
二度と悲しい想いさせたくなくて。
気づいたら見えなくなって。
そう思えば思うほど見失った。
(それが一番の間違いだ)
二度と傷つけないように。
二度と悲しい思いをさせないように。
ちゃんと伝えて、向き合えば良いだけ。
後悔、間違い、決して消えない。
消せないモノに捕らわれている時間なんてない。
帰宅時間と重なり、道路は渋滞。
掛かってきた一本の電話。
「時間が早まっているだと?」
俺はその言葉を聞き、車のドアを開ける。
「さっさと下らん鬼ごっこなど、終わらせて来い!二度と見失うな」
ドンッ!
背中を勢い良く押され、車内から飛び出す。
ーーひとつだけだよ!欲張ったら叶えて貰えないんだから!だから、ちゃんと家康も考えといてね?
お願いごと。
俺は「赤い橋」を目指した。