第165章 涙色の答案用紙(29)修学旅行編
市バスの中___
ポツポツ雨がポタポタ雨に変わった。
バスに乗り込み、ある場所に向かう。
さっき、封筒を見ているのが辛くて。
帯の中に仕舞おうとしたら、あることに気づいた。
三つ葉のヘアピンが無いことに。
(きっと、あの時に……)
家康がくれた大切なモノ。
私はまた何かを見失う。
私が私でいられなくなる気がして。
新しいトリートメントつけて。
新しいリップつけて。
髪型を変えて。
新しい自分になれた気がしただけ。
見た目なんか何にも関係ない。
(心は誤魔化せなかった)
ずっと、隠して閉じ込めて。
家康を見ないようにしてても……
家康と一言交わすだけで。
家康と目が合うだけで。
(すぐに家康でいっぱいになった)
それに気づくのが怖くて。
ぎこちない関係になってしまった。
天音ちゃんに対しても同じ。
避けているつもりなくても、
避けていたかもしれない。
嫌な感情が生まれてしまいそうで、
それが怖くて。
「二条城前」
目的地に近い停留所で下車。
真っ黒な空から降る、雨粒。
ピンク色のランドセルの女の子。
ーー雨の夜は、特に良いんだって!ここはね……昔に偉大な人とお姫様が仲直りした場所かもしれないんだって!だから、恋の願いは良く聞くって噂なんだよ!
私は「赤い橋」に向かった。