第156章 涙色の答案用紙(20)修学旅行編
修学旅行、九月___
秋の気配が漂い始める季節。
盆地で暑さが厳しい京都では日中、
真夏並みの気温になる日も。
それでも、朝晩は気温も下がって過ごしやすくなり、戦国学園二年生の生徒は、制服のシャツを半袖派、長袖派に分かれ、赤いネクタイ、赤いリボンを付けていた。
冷房の効いたバスの車内。
席は班で固まって座るように指示され、後方にいたひまり達五人は周りが思わずコソコソ騒ぐ程、ぎこちない雰囲気。
「あいつらこの前から様子、変だけど。一体、何があったんだ?」
「今朝なんか、伊達と徳川。無言ですっげー睨み合ってたぜ!?」
近くの席にいた男子はヒソヒソ話。
触らぬ神に祟りなしだな。と、言って狸寝入りを始める。
そして……狸寝入りしたくても出来ないのが一人。
(なんで!わたしがぁぁ!!)
弓乃は状況に耐えれず、拳を顔の横で震わせ心の中で大絶叫。
本来はひまりと座る予定だったが、政宗と家康の険悪なムードをひしひしと感じ取り、だからと言ってこの状況でひまりか天音を家康を隣に座らす訳にもいかず……。渋々、自分が犠牲に。
仏頂面を浮かべ、さっきからずっと黙り込む家康をキッと睨みつけた。
「……いい加減さぁ。男、見せれないの?保健室に運んだのは、黙っといてくれって言うから、ひまりに聞かれてもすっとぼけてあげたんだけど?」
前の席にいるひまりに聞こえないよう、ボソボソと話す。
「人の心配する暇あるなら、自分の心配したら?……政宗、良いわけ?」
「へ!?な、なんの話!?」
弓乃は家康の言葉に動揺をみせ、声が上擦る。
興味はないが、勘と鋭さはやたらと働く家康。必死に「私には秀吉先輩が!」と、誤魔化そうとする弓乃をツンと知らん顔して無視すると、前に視線を移す。
「ふふっ、やっぱり秋は栗だね!」
「だな。……アレ、今度返す」
座席と座席の間。
その隙間からチラリと覗くひまりの横顔。家康は少し笑顔が戻ったことにホッと胸を撫で下ろすが、表情と気分は憂鬱。
政宗から来たあのメールに、ショックは隠せなかった。