第149章 涙色の答案用紙(13)
中に入ると、お母さんとおばちゃんが
ギョッとしたように飛び込むように帰ってきた私を見る。
「た、ただいま!おばちゃんもいらっしゃい」
「ひまりちゃん。ちょうど良かったわ!今度の休日に栗ご飯炊こうかなぁ〜と、思って。良かったら、手伝いに来て貰えないかしら?」
「ごめんなさい。先にその日、約束しちゃって……ゆっくりしていって下さいね」
私はペコっと頭を下げて、靴を脱ぐとリビングには行かず部屋に向かう。
そして部屋に入った瞬間、扉を閉めてズルズルと滑り落ちた。
「……あの二人。何があったのかしら……」
「北海道の時は、あんなに仲良かったのに……」
お母さんとおばちゃんの声が微かに聞こえて、私はポスッとベットに体を預ける。
北海道。
楽しかったな。
ーー今を大事にしなさい。
つつじさんの言葉が蘇る。
雨が次第に弱まった頃。
私は起き上がり、制服のスカートから手鏡で、今の姿を映す。
ーー貴様こそ、鏡で自分を見たのか?今の姿を。
織田先生の言葉は、いつも胸に響く。はぐらかされてばかりで、よくわかんない時もあるけど。
(どんな顔してたっけ……)
まだ、どこか腫れぼったい瞼。
そして……髪をそっと搔き上げる。
真新しいシルシ。
家康じゃなくて政宗の。
コツン。
くまたんを胸に抱き締めながら、壁に頭を打ち付けて、目を閉じた。
明日は少しでも、上手く笑えますように。
雨は嫌いじゃない。
でも、心に降る雨は何かを見失う気がして、好きになれないかもしれない。
雨上がりに空に架かる虹。
私の心もいつか晴れて
何かを繋ぐ日がくるのかな……
それは、明日か、明後日か……。
いつなのか___
ひまりの家の前。
弱まった雨の中。
「横から見るのは予想以上に、堪えるだろ?」
「…………」
家康と政宗は鋭い視線を絡ませていた。