第127章 『熱い視線』
そんな頃、家康は……
一人で夕日に染まる海を眺めていた。
政宗がひまりに人工呼吸した事実と、三成に自分が人工呼吸をした事実へのショックが大き過ぎて……
(……………)
頭も心も空っぽになっていた。
しかし、
やはり人助けは良い事。
神も決して、見捨てたりはしない。
「家康……お願いがあるんだけど」
背後から声をかけて来たのは……
「ひまり……」
夕日と同じぐらい頬を染め、タオルを身体に巻き付けたひまりだった。
何?と家康が聞けば、
遠慮がちに近づき……
そして……
「これ……貸して欲しいの」
甘えた声で、上目遣いをしながら家康が着ているパーカーをクイッと、引っ張った。
「良いけど///……はい」
家康は一瞬胸をドキッと高鳴らせ、自分が羽織っていたパーカーを脱ぐ。
「ありがとう。ちょっと……この格好だと動きにくくて」
「水着でさんざん動いてたのに?」
何を今更?
家康は訝しげに目を細める。
ひまりはちょっとね。と、はにかみながらパーカーを受け取ろうと、手を伸ばした……
次の瞬間!!
グラッと大きく船が揺れ。
巻き付けていたタオルが海に落ちる。
そして、
「きゃっ……!」
「危なっ……!」
二人は重なるようにして、倒れ込んだ。咄嗟にひまりを抱き、下敷きになった家康は上半身をゆっくり起こす。
「いっ……怪我してな……って……な、な、な、な、なんて格好してんの!///」
「だ、だって!織田先生がぁ〜〜っ///だから、パーカー借りに着たの!!……どこ!パーカーどこ〜!!」
家康のパーカーは、ヒラヒラと風に乗りタオルと同様に赤い海に消えていく……
「ちょ!そこ乗るのは勘弁して!///あとしがみ付くのも!///」
「だって、離れたら見えるから恥ずかしい///」
裸同然の姿で密着。
(やばい!本気でやばい!///)
家康は色々と耐えるのに必死。
(恥ずかしいよーーっ///)
ひまりは、羞恥で涙を浮かべる。
そんな二人の姿を、「熱い視線」で……
赤く染まった太陽が見下ろしていた。
熱い視線〜完〜