第123章 大会編あとがき
空一面に星々がきらめく中。
家康とひまりは肩を並べ、帰路に着く。星空をただ静かに見上げ、気恥ずかしさをお互い何処と無く漂わせていた。
ひまりはふと足を止め、
無数の星の光の中に大三角を見つけると、指でその点を結びながら……
「わし座アルタイル、こと座ベガ、はくちょう座デネブ……ねぇ、知ってる?アルタイルとベガは〜〜……」
「七夕の彦星と織姫って、どうせ言いたいんでしょ?」
「ふふっ、正解!でも意外!家康でも星に興味あるんだね?」
学年首席さんは、知識の宝庫だね!
ひまりは、クスリと笑って星空から視線を家康に移す。
すると、
「ひまりに昔、散々聞かされたからね」
家康は口元を緩めて、
背後から抱きよせると……
ひまりの細い指先の上に、
優しく自分の指を添えて……
夏の大三角。
三つの星を結び描くように、動かす。
「織姫と彦星。何でその二つの星と、はくちょう座デネブが結ぶのか、三角になる必要ある?とか、夏休みよく言ってたし」
「……よく、覚えてるね。言った本人も忘れてるのに」
「覚えてる。ひまりが言ったこと……全部」
ひまりは、鳴り出す胸をこっそり押さえた。しかし、そのさり気ない行動一つさえ、家康には見つかり……
「この髪の香り。ほんと、昔と変わらないから」
全部、思い出せる。
「……好きだから。小さい頃から、ずっと……この香り」
なおいっそう、
ひまりの胸を焦がした。
二人のほんのり甘い時間。
まだまだ暑い夏の夜空の下。
まだまだ続く夏休みの最中。
始まる。
大会編(完)