第112章 『happeningな一日』
弓道大会個人予選後の帰り道。
私はトボトボとコンクリートに映る自分影に、目線を落としながら歩く。
すぐ隣に寄り添う影。
私の影なんかよりずっと、
スラッと細く伸びて……
まるで、今日の大会の結果みたいに思えて無性に悲しくなった。
「あ!そうだ!お母さんがさっき電話でね!この前のお礼したいから、ウチに晩御飯食べに来て欲しいって!」
顔をあげて、笑顔を作る。
「……別にお礼なんて」
「だーめ!今日の予選結果聞いて、張り切ってたもん!私もお祝いにケーキ作るから!ちゃんと来てね!」
遠慮する家康の腕を引っ張り、ね?と、お願いすれば。着替えたら行くと言って約束を交わし、私は家の中に入っていく。
そして、パタンと扉を閉め。
はぁーー……。
お腹の底から溜息を吐いた。
(個人予選落としちゃった……)
昨日の団体予選三人立。
一本目を確実に決めないといけない「大前」は私。安定が求められる「中」はゆっちゃん。そして一番プレッシャーがかかる「落ち」を副部長が見事矢を決めてくれたお陰で予選通過。
落ち込んでいる理由は、今日の個人予選。
私は次決めれば予選通過の所で、
矢を外して……敗退。
(引きずったら明日の団体決勝に響いちゃう。何とか切り替えないと……)
階段を一段、一段、昇り着替えの為に、部屋に向かう。
そしてそのままベットに身体を預け、ゴロンと仰向けに寝転がり瞼を閉じた。
(家康の矢。本当に真っ直ぐ飛んでた)
女子個人予選の後。
男子個人予選が行われ、
気づいたらずっと家康の背中。
目で追いかけてて……
射場から弓構えをした時の背筋がピンと糸が張られたみたい、真っ直ぐ伸びるのが凄い綺麗で。
弦音が鳴った瞬間ーー……。
(あぁーっ!ダメ!今は、大会に集中しないと!!)
がバッ!とベットから跳ねるように起きて、軽く頬をペチペチ叩く。
(自分と向き合うのは、大会後って決めたんだから!うん!)
着替えをクローゼットから取り出す序でに、机の上にちょこんと置かれた、私の想い出箱を奥底に仕舞う。