第111章 『図書館青春』家康様side
「は?……次、ボッーとしてたら帰るよ」
「ちゃんと聞いてるよ!ただ、そ、の……字が綺麗だなぁ〜って」
そんなお世辞言っても、無理。
「……誤魔化す気?」
そんな事、褒めなくて良いから。ちゃんと集中して。ほんとお願いだから。
(こっちだって、色々頑張って……)
触りたくても我慢してんのに。
そんな胸中を無視して身体を寄せてくるひまりは、俺の中で一番の意地悪姫。
だからわざと、
「ひまり……」
耳元で名前呼んで、
意識させる。
「何、赤くなってんの?」
からかって。
「な、なんでも……っ///」
「自分で近いといて……」
自覚を少しさせると、
「い、いきなり///家康が耳元で喋るから」
やっと、俺を意識する。
赤くなった耳を押さえる姿に満足しながら、もう一回だけ解き方を教えた。
バレンタイン当日___
「はい!家康専用!特別チョコだよ!」
本命チョコかと勘違いするぐらい、
綺麗にラッピングされた物を差し出すひまり。
他の男にはクッキーあげて、
チョコは確かに俺だけ。
「お返し何が良い?」
「え?いいよ。そんなの」
不満はあるけど『特別』の二文字に、すっかり機嫌が良くなるとか、ほんと単純。
「中学最後だし。俺も特別貰ったから、リクエスト聞いてあげる」
たまには、甘やかしてあげないと。
高校生になる前に練習。
何でもいいの?
俺が頷くと、
「なら、第二ボタン欲しい!」
特に深い理由はないらしい。
けど、
リクエストした時の笑顔は……
高校生になった今も、
頭に焼き付いて離れない。
図書館青春〜家康様side(完)〜