第107章 『貴方は私のbodyguard???』前編
昔、お父さんに言われた。
「夏は変質者が出やすいから!気をつけないとダメだぞ!」
薄着になり開放感から、その危険性が高くなるって。だから、夏休み遊びに行く時は、口が酸っぱくなるぐらい言われて……。
そして、今朝も
「夏だからな!戸締りだけは十分に気をつけるんだぞ!」
「うん!二人こそ、初の海外旅行なんだからっ!気をつけて行ってきてね!」
大きなキャリーケース二個。
それを乗用車の
トランクに押し込むお父さん。
私は笑顔で送り出す。
お母さんがたまたまデパートのレシートで、応募した懸賞。それが見事大当たりして、両親は今日から三泊四日間の海外旅行。
私が一人留守番をすることに。
「いいか!必ず……っ!……」
それが凄く心配みたいで、私の肩をグラグラと揺らして耳にタコが出来そうなぐらい、お父さんはさっきから同じ台詞を言う。
「もう高校生だから、大丈夫だよ!」
「やっぱ無理だ!母さん!こんな可愛い娘を一人置いて行けない!」
「はぁ……。なら、あなた留守番する?ひまりと行くから」
お母さんは、腕時計で時間を確認しながら冗談か本気かわからないような声色で言うと、お父さんは大急ぎで運転席に乗り込んだ。
私も正直、海外旅行には憧れる。
でも大会前で部活もあるしね。それに結婚記念日も近いから、二人で仲良く楽しんできて欲しい。
エンジン音が鳴り、
私は車道に移動する。
いってらっしゃい!
すると、助手席の窓が開いて……
「ひまり。お礼に今度、晩御飯ご馳走するって伝えといてね」
え?誰に?
お母さんはサングラスをサッとかけ、
もうセレブ気分で手を振る。
私は暫く首を傾げたまま、車のナンバーが見えなくなるまで手を振った。
そしてこの意味を、
私が理解したのは……
その日の八時過ぎ。
ピンポーン。
いつもは寝る前入浴の私が、
珍しく、お風呂上がりだった時。