第103章 夏の大三角(11)殿様ゲーム編
家康が私に意地悪をする理由。
「前向いててよ」
今もわからないけど。
急にぶっきらぼうな態度になったり。
話しかけても素っ気なかったり。
バカにしてきたり、嫌なこと言ったり。
でも、
ーーほんと、無口で無愛想だよね!
ーーても、最近はあのクールな所が人気みたいだけど。
ーー無愛想?クール?意地悪の間違いじゃない?
家康が密かにモテだした中学二年。
皆んなのイメージと、私の中での家康が、食い違ってる事に気付いた。
ーー素っ気なくても、文句言いながらでもちゃんと聞いてくれたり、手伝ってくれるよ?
ーーそれ、ひまり限定だから。
ーーそうそう。ようするに感情入りか入りじゃないかの違いだね!
裏返しで、素っ気ないのと
興味なくて、素っ気ないのは
全然違うよって言われたけど……。
「ひまりの香り。昔から変わんない」
家康は髪に鼻を近づかせ、クンクンと嗅いでいるのが後ろ向きでもわかる。
「朝つけるトリートメント。昔からずっと愛用してるから。……ってそうじゃなくて!離してよーーっ!」
「やだ。他の奴にあんなに触らせて、俺がどんだけ……」
殿様ゲーム中だったのを、
すっかり忘れそうになってて。
身体を捩りながらもがくと、
家康は何かを言いかけて、
途中で止める。
そして
私の肩に頭を乗せ、
更に身体をくっ付けた。
高校に入ってから。
家康の意地悪が、少し変わった。
いっぱい触ってくるし、ドキドキするようなこと、ばっかりしてきて……
「早くしないと、順番つっかえちゃうよ?」
まだ、四番目。
あと、半分ある。
この命令で大分時間使っちゃったから、大急ぎでしないと。
なのに、
「次、三成だから嫌だ」
甘えたような、拗ねたような声。
顔が見えないからわかんないよ。
「皆んな見てるし!
ね?///は、恥ずかしいから///」
「見せつけてんの。
ひまりが意地悪されて……」
一番、
真っ赤になって
ドキドキすんのは
俺の時だって。
「証明したいから」
かぁっ……///
家康が私に意地悪する理由。
今ので、
少しだけわかったかもしれない。