第88章 『二つの夢物語』
カラカラ……。
窓を開け、夜風を浴びる。
昨夜、冷房を付けっぱなしで眠ってしまい、軽い頭痛とダルさを感じて今夜は自然の風を浴びることにした。
(何とか家康に許して貰えたから良かった〜)
私は、机の上に置かれた一枚の写真を見る。
(後でアルバムの中に戻さないとね)
頭を軽く押さえながら、ふとまだミルク入りのキャンディが残っていた事を思い出して……。
糖分を摂取すれば頭痛がマシになるかもと思い、パクッと口の中に入れた直後。
(甘い〜〜ん?電話?)
携帯の着信音。
私は窓を開けたままベットに座り、キャンディを含んだまま画面に表示された名前を見て、電話に出る。
「もひもひ?ひえやふ?」
「……何、食べてんの。こんな時間に」
太るよ。
家康に憎まれ口を言われ、私はもう!と思いながら、キャンディを急いで噛み砕く。
「ちょっと、頭痛くて糖分取ってたの!それより、どうしたの?」
家康が電話を掛けてくるのも、珍しい。
それこそ、こんな時間に。
ベットの棚にちょこんと置いた目覚まし時計の針は、もう十時を回っていた。
「明日、急遽予備校入って夏休みの合宿の打ち合わせ行けない。だから帰りは……ってひまり聞いてんの?」
何だろう……。
また、急に眠気が……。
「ひまり」
家康の声。
何故か、少し低めで……
でも凄く優しい気がした。