第88章 『二つの夢物語』
お風呂上がり、流石に暑くてクーラーの電源を入れる。
人工風がちょっと苦手な私。
あたり過ぎると風邪引いたり、頭痛が出たりするから日頃から気を付けて、あまり付けないようにしていた。
(ここまで暑いと無理かな?)
タオルでパンパンと髪の毛を叩き込みながら、ふと机の上に置かれた二つのキャンディに気づく。
ミルク入りの苺味。
ただの苺味。
「あっ!?もしかして、誰かに貰って忘れてたのかな?……パクっ!」
お風呂上がりだし、気分的にただの苺味のキャンディを口の中に放り込んだ。舌でコロコロ転がすと、甘酸っぱい味が広がる。
ピロンッ!
その時、携帯に一件のメール。
『約束〜!忘れないで、明日持ってきてよ!』
ゆっちゃんから。
私は今日、学校で話した約束を思い出し、クローゼットから、アルバムを取り出す。
(確か、幼稚園の頃だから〜………あった!ふふっ!)
貴重な一枚の写真を抜きとる。
ゆっちゃんと政宗に見せたら
家康に怒られるかな?
昔懐かしい写真。
お揃いの
花柄のワンピース。
満面の笑顔を浮かべた私。
その隣でしかめっ面をした家康。
手を繋いだ幼い頃の私達二人が、
その写真の中にいた。
「ふぁ〜〜……」
何だろ……
急に、眠気が……。
写真を握りしめたまま、
私は夢の中に落ちていた。