第292章 あなたに何度でも(12)
トスンッ。
私達は繋がったまま、
布団に倒れ込む。
「はぁっ、はぁ……家康……」
「ひまり……」
おでこを合わせた途端。
光り出した私の胸。
体を少しだけ起こした家康が、
数秒後に息を飲むのが分かった。
「花が……」
ねぇ、神様。
家康と一緒にいたいと思うのは駄目ですか……?
時が止まれば良いと思うのは……罪深い……ことですかっ……?
カチカチカチカチ。
今まで気にならなかった腕時計の音が時間を刻む。
時間が残り少ないと悟った
私は、それを腕から外してふわりと笑うと……
家康の腕にはめた。
「ひまりっ……」
家康の左目。
その赤い目が滲んでいくのが見えて……
「ふふっ。そんな顔しないで……」
泣き顔なんて似合わないよ。
最後はせめて笑顔でいさせて。
だから、切なくさせないで……。
「約束を守ってくれたのが……嬉しいからっ……」
初めてを捧げた日。
ーー永久就職。ひまりがするまでは……。我慢する。
ルージュ撮影の日。
ーーただ、欲しいってだけじゃなくて。いつかそうなっても良い……その日の為に……ひまりのこと大事にしたい。
いつかそんな日が来るって信じてる。
「くそっ……何でっ……」
悔しそうに歯をくいしばる家康を見て、私は両頬を包む。
「最後に約束させて……」
もし、時を超えるぐらい遠くに離れてしまっても……もしも、この気持ちを見失ってしまっても……例え、この日の記憶が消えたとしても……。
「違う世界に連れていかれても……」
私は何度でも貴方に恋をする。
「それが……最後の約束……」
上手に笑えてるかな?
もう涙でぼやけて何にも見えない。
「っ……くっ…………」
赤い目から落ちた雫。
それがゆっくりと私の肌に落ちた。
〜あなたに何度でも〜fin