第291章 あなたに何度でも(11)
拝殿の外で聞き耳を立てていた、
翠玉と天鏡。
二人はその場をそっと離れると満月をより近く感じる御神木に飛び乗った。
「花を育てたのは、神の試練というより悪戯か……」
「置き手紙なんじゃない?二人への……。戦国姫は気づいていたんだろうね。自分の天命がまだ断ち切れてないのを……」
だから、書物と手紙を残した。
約束した永遠を……
来世に繋げるために……
「ここからが……」
「あの二人なら大丈夫だよ」
下から声を掛けたのは信康。
「俺も木に登らせてくれないか?近くで月が見てみたい」
「「信康……」」
二人は顔を見合わせ、指を二本顔前で立てると術のようなものを唱える。すると、信康の姿が木の上に現れた。
「まさか、お前達がワームホールを呼び出していたとはね」
「姫の心の花が咲いたからね。俺逹の本来の力が戻った」
「前世……神に命を救われた時、約束したんだよ。使い魔になり、必ず、三つの神器を揃えるってね」
だから……
時を越えさせた。
天鏡はこうなる気がしてたんだと。
「信康……それより、本当に良いのか?」
「この神社にはお前たち二人がいるじゃないか」
「そうだけど……」
二人はしゅんと耳を下げる。
そんな悪戯好きのらしくない二人の姿を見て、ぽんぽんと頭を撫でると手が届きそうな満月を見上げ……
「これで良いんだよ。前世の記憶も多分、神の方は消える」
複雑そうな表情で中途半端に笑った。
儀式を始めた二人。
(俺はどうなっても良い。ひまりを普通の女の子に……)
(私はどうなっても良い。だから、家康のこの左目を……)
互いのことを思い合い……
月夜の綺麗な晩に溶けてゆく。