第290章 あなたに何度でも(10)
記憶を取り戻した家康。
バッと起き上がり……
「ワームホール……行かないと!」
「家康様!どこへっ!」
制服を掴むと、今にも走りだしそうになる家康を天女のひまりは止める。
「あんたを抱くのは俺じゃない。きっと……」
「家康様……。どなたか大切な方がいらっしゃるのですね」
「あぁ。必ず、戻ると約束した。永遠の剣を持って……」
オルゴールをぎゅっと握りしめ、目を閉じた家康。すると天女のひまりは少し躊躇いがちに目を伏せ……家康の手を取った。
シャランッ。
魔法を使った様にその手の上に乗せられたのは永遠の剣。
「……持って行って下さい」
「これが、永遠の剣……」
よく巫女が神事に使う鈴のついた剣。
それを見て、家康は驚いた。
そして……
同じく記憶を取り戻したひまり。
「行かなきゃ……家康が戻ってくる!」
「ひまりっ!落ち着いて!」
くるりと背中を向けたひまりに信康は、慌てて声を掛ける。
「信康くん。私は普通の女の子に戻れなくてもいいの」
「そんなに……そんなに徳川がいいのか?」
「家康じゃないと駄目なのっ。キスもそれ以上のことも……触れて欲しいのは一人だけ」
オルゴールに涙を一雫落とし笑ったひまり。すると信康はしばらく口を閉ざす。時間すれば数秒のこと。
「翠玉、天鏡。約束だ。……ひまりを石碑の場所へ」
「「信康……」」
姿を現した二人。
「ひまりの記憶が戻った時は儀式を諦めると約束しただろう?」
「……分かった」
「姫!こっちに来て!ワームホールはもうすぐ現れる!」
「え……?きゃぁ!」
光りだした自分の体に、
ひまりは悲鳴をあげた。