第288章 あなたに何度でも(8)
また、不思議な夢…………
私を夢の世界に連れてゆく。
深夜にも関わらず、寒さをしのぐ様に寄り添いながら辿り着いた野原。
ーー……ここ、月が凄く綺麗に見えますね!
満月を見上げながら複雑な思いを抱きながらも、私は手を胸前で組みくるりと振り向いて見せた笑顔。
ーーあんた薄着だし、寒くないの?……もっと、こっち来たら?
誰かが私に羽織をかけてくれて……背後から抱きしめられた。遠慮するのに、良いからって言われて……自分とは違う香りに包まれる。そっと髪に触れられて、振り返ろうとすれば視線を横に逸らされ……スッと足元にしゃがみ込んだ姿を目で追う。
ーー……初めて見た。
ーー…………綺麗な花ですね。
私は隣にしゃがみ込みその花を見て呟いた時……重なる唇。
時が止まったように暫くそのままで……目を開ければ、名残惜しそうに唇は離れてゆき、真っ直ぐな翡翠色の瞳が私を見つめる。
ーー………あんたが、好きだ。
その言葉に驚き、頬が熱くなるのを感じて俯けば、手を握られた。
ーーだから、これからも会って欲しい。
ーー………私も、わ…たしも同じ気持ちです。でも…………今は受け取れません。
嬉しさと同時に込み上がった悲しみ。目に涙を溜め、私は首を左右に振り、今はどうしても無理だと伝える。
理由を何度聞かれても、答えれなかった。
でも必ずまた、会いにくるから……
だから、約束をさせて欲しいと……
ーーもし、時を超えるぐらい遠くに離れてしまっても……もしも、この気持ちを見失ってしまっても……例え、この日の記憶が消えたとしても……
私は必ず、
「あなたにもう一度、恋をする」
その事を、約束しますと。
伝う涙に構わずに私はふわりと笑う。
ーーだから、今はその気持ちを忘れて下さい。……必ず、会いに来ます。
ーー……解った。なら、一つだけ贈り物をさせて欲しい。この花は冬の月が本当に綺麗な夜にしか咲かない……幻の花。
まるで、あんたみたいだから……
この花の名前を……
あんたに贈らせて欲しい。
「ひまり」
ガバッ!!!