第284章 あなたに何度でも(4)
月夜の綺麗な晩___
ーー家康様……。
暗闇の中、私は何も纏わずに
目の前の肌に手を伸ばす。
ーー……あんた、何か消えそうで恐いんだけど。
届いた少し困った様な声。
その声に愛おしさを感じて、更に腕を伸ばした。この瞬間を噛みしめる様に。
ピッピッピッ………
耳に届いたアラーム音。
目を開けると私は泣いていた。
切なくて胸がぎゅっと押しつぶされるような感覚に、ぽろぽろと涙をこぼしながら……
(今の……夢……?)
ゴシゴシと目を擦り……
ベットから起き上がった。
(何か懐かしい……)
そんな印象を受けた夢。
でも暫くすると涙は止まり、私は床に足を置くと軽く伸びをする。
休日明けの今日。学校が始まる。
家康が居なくなって三日……
お正月休みを遅めにとって海外に行っていたおばちゃん達が今日、戻ってくる。
ーー家康の両親には暫く俺の元にいると伝えておく。教育の一環とでも言って、誤魔化す。
いつ戻ってくるかわからないからって。先生の所と聞けばおばちゃん達も安心するだろうけど……
(家康…………)
私は一刻も早く会いたい。
そう思い、自分の体を自分で抱きしめた時。
コンコンッ。
部屋の窓から音がして、視線を向けると……ある人影がそこに。
「佐助くんっ!?」
「朝早くからすまない」
キラッと朝日に輝く眼鏡。
カラカラと窓を開ければ、佐助くんはお邪魔すると言って部屋の中に入ってくる。
「何かっ!もしかして家康について分かったの!?」
「残念ながら……無事に戦国時代へタイムスリップしたかは確かめる方法はないよ」
詰め寄る私に佐助くんは無表情でそう言うと、心配になって様子を見に来たと話す。