第283章 あなたに何度でも(3)
夢の中で誰かが告げる。
「剣は戦国の世に……」
繰り返し繰り返し何度も。それからすぐにもう一つの声が聞こえて……
「や、く、そ、く!だよっ!」
小さな頃のひまりが小指を立てて、ふわりと笑った。俺はその笑顔を右目で見てにこりと笑い返す。
自分に向けられていない笑顔。
成長過程で断片的に思い出してゆく前世の記憶。それがはっきりと自覚し始めた時だった。まずは母が病気で亡くなり、それを追うように父も亡くなった。それからだ、翠玉と天鏡の姿が見えるようになったのは……
それが小学校の高学年の頃。
家から遠くの中学に通っていた俺はほとんど友達と遊べずに、家に帰って来ては夜遅くまで翠玉と天鏡と遊んだ。
二人は色んな話を聞かせてくれた。
ーー信康は儀式をして神様の生まれ変わりになるのさ!
ーーだから、必ず幸せになる!
ふわふわの尻尾を揺らして、いつも側に居てくれた。
ーーいいか!契りを交わす儀式は十七になる時。それまでに三つの神器を集め、鏡の中の花を綺麗に咲かせないといけないからな!
ーーその右目は、正式に契りを交わせば本来の色に戻る。
ずっとそう教えられてきた。
幼馴染の二人をこっそり見に行った時もあった。じじ様からこの神社の言い伝えと、ひまりは一緒に育っていたかもしれないと聞き、悔やんだ。