第282章 あなたに何度でも(2)
床すれすれまで伸びた長い髪。
「…………ひまり?」
「いや……何でもない……」
ーーひまりはかつて天女だった。
ふと過ぎった神木の言葉。
(何だこの感じ……初めて会った気がしない……)
髪の長さは違えど、容姿そのものはひまりと瓜二つ。間違いない……これは天女の時のひまり。
(だからか?初めて会った気がしないのは……)
降りてきた不思議な感覚に戸惑っていると……
「本当にどうなさったのですか?」
栗色の大きな瞳の中に俺の顔が映る。
「……別に……っ!」
「本当ですね。少し熱が……今、冷やすものをお持ちします。その間にお召し物をお着替え下さい」
額にあてられた冷たい手。
辛子色の着物を渡され、新しい布団が用意され、気がつけばパタパタと小走りする足音が聞こえた。一人部屋に残された俺は、今のうちに状況を整理しようととりあえず制服を脱ぐ。
着物に着替え、
寒さをしのぐ様に布団に潜りこんだ。
(これからどうすれば……)
しかし……
(ひまり……)
熱のせいかロクに頭が回らず……
「家康様?…………寝てしまわれたみたいですね」
俺は気づいたら深い眠りに……
落ちていた。