第280章 天邪鬼の愛〜真紅〜(22)
すると信康くんが声を張り上げるのが聞こえて……背中からぬくもりが消える。
「翠玉、天鏡!!」
「分かってるよ!!」
突然、ぴょんっと信康くんの背後で何かが跳ねた。そして何かを唱えるような声が近くで聞こえたと思えば…………
「「ハッ!!」」
「えっ…………何これ……壁……?」
四角い透明のボックスのような物に閉じ込められる。まるで公衆電話のような。
「家康っ!家康っ!」
ドンドンッ!って手で壁を叩くと………
「「「「家康!!」」」」
織田先生たちの姿がこっち向かって走ってくるのが見えて、家康は私の前に立ちふさがると…………
「連れて行くなら俺を連れて行けっ!!」
大声でそう叫んだ。
そしてゆっくりと振り返って…………
「暫く会えないけど。……必ず、帰ってくるから」
柔らかく微笑んだ。
「俺の宿命を背負ったんだ!必ず、永遠の剣をっ!」
「永遠の剣?一体何の話をしてるのっ!出してっ!ここから出してっ!」
ザァァァァッ……
ゴォォォォッオオオッ!!!!
無数に落ちる稲光。
そして次の瞬間、地鳴りのような音。
ドオオォォォオンッッ!!
「いやぁああああっ!」
私は薄れ行く意識の中……
「…………愛してる」
家康の声だけは鮮明に届いた。
〜天邪鬼の愛〜真紅〜fin〜