第277章 天邪鬼の愛〜真紅〜(19)
絶句する家康の隣に移動した信康は前髪を掻きあげ、神妙な顔つきを浮かべると鏡の中に咲いた花を見ては、胸を落とす。
「…………まだ真実の花は完全じゃない。このままでは、儀式の前に枯れてしまう」
「だから言ったろ?無理に咲かせても意味ないってさ」
翠玉は予感的中し、得意げに花をえっへんとばかりに上げる横で、天鏡は少し浮かない表情をして心配そうに花を見つめた。
「分かってるよ。だから、徳川に言ったんだ。このまま一緒にいたら大変な事になるってね」
「さっきから、儀式とか枯れるとか……何の話。……説明して」
「順を追って話をするよ。ただし、条件付きでね……」
信康は真顔でそう言うと、家康を家の中に招き入れる。後ろから尻尾をふわふわさせ、翠玉、天鏡も一緒に中へ。
そして全ての話を聞いた家康は……ただ、静かに頷いた。
ある決心をして、立ち上がる。
神が二人に残した最後の試練。
それはどんな結末へと向かうのか……。
二人が石碑の前で誓った
『永遠の愛』
それが運命を変え、
天命が……宿命が動き出す。