第277章 天邪鬼の愛〜真紅〜(19)
新学期___
コートを羽織り、生徒達はクリーニング仕立ての制服に身を包み、冬休みの思い出を語りながら登校してくる。クリスマスは恋人と過ごした生徒や友人、家族と過ごした生徒。そういった話題に花を咲かせ、正月は寝正月だったとか何処かに出掛けたとか他愛のない話をしながら、寒さを吹き飛ばすように表情は晴れ晴れとしていた。
「ひまり!おはよー!」
「おはよう……」
そんな姿を信長は職員室から眺めていると、肩を落としてまるで別人のようにやつれたひまりが一人で登校してくる。不安、悲しみ……そうした幾つもの感情が混じり合いべったりと顔に張りつき足取りも遅かった。
(あの様子ではまともに寝ておらんな)
「織田先生。この資料なんですが……」
「学園長に渡しておく。そこに置いといてくれ」
新学期の職員室は活気良く、三年生を受け持つ担任はセンター試験に向けて忙しそうに駆けずり回る。
カツカツカツ。
学園長室前___
キィッー……
「……どうだ。ワームホールの方は」
「……場所が特定できません。まるで感情を持ち悩んでいるように思えます」
佐助はカタカタとパソコンのキーボードを打ち込むと、画面を信長の方に向けた。
「前回同様、やはりひまりの心と関係しているのか?」
「はい。その線は強いかと。もし、出現するのならば彼女を追いかける形で……しかし、出現するのも確実ではありません。やはり、あの二人が距離を置いたことで……」
佐助は頭を悩ませる。
前回は心の影響というより戦国姫とひまりの心が何らかの状況が類似、波長、繋がりが呼び起こしたと考えていたが……果たして今回もそうなのだろうか。