第276章 天邪鬼の愛〜真紅〜(18)
神木なんかに絶対、触れさせない。
神の生まれ変わりであろうが、俺のこの左目の痛みと約束を忘れていくことが、例え天罰だろうがなかろうが関係ない。
必ず何か方法はある。
荷造りを終えた俺は外に出た。
荷物だけ先に置きに行こうと……
降り積もった雪で足跡をつけ、ひまりの家の前で足跡を付けるのをやめる。
顔を上げて見上げれば、そこには昼間にも関わらずピンク色のカーテンで覆われた窓があった。
(あんなに泣かせて…………)
まだ、泣いているだろうか。
俺はそっと手首に触れる。
昨夜までつけていた腕時計。
サイドテーブルの上に置いてきしまった。あれだけでもひまりの側にあって欲しかったのが本音。
俺の代わりに……
一緒に時を刻んで欲しかった。
冬休み中、俺はほとんど外に出なかった。一度だけ神木に会いにいったが、留守でそれっきり。正月は流石に世話になっている以上、秀吉先輩の神社で裏方的な仕事はさせて貰ったぐらい。
予備校に行く途中は、無意識にひまりの姿を何度も探す自分がいて……携帯を見れば、メール、着信履歴、何度も確認。冬休み中に交わした約束が記されたカレンダーを見ては溜息ばかり吐くそんな自分が嫌になり、俺の心は次第に壊れかかる。
ひまりに触れたくて堪らない。
けど、それ以上に何も事情を知らないひまりが苦しんでいるかと思うと、胸が押しつぶされそうなぐらい痛くて、一度も会えないまま、連絡も取り合わないまま、気がつけば長いようで短い冬休みが終わり……
新学期を迎えていた。