第276章 天邪鬼の愛〜真紅〜(18)
降り立った駅のホーム。
ちらちらと雪が舞っていた。
始発で京都から戻った俺は、真っ直ぐに家に帰ると冬休み中、事情を知っている秀吉先輩の所に世話になろうと思い、簡単な荷造りをしていた時だ。
携帯が鳴ったのは。
すぐにひまりだと分かり、俺は画面さえも見ずに荷造りを再開。父さんも母さんも留守にしてて、帰ってきたら適当に予備校が近いからとでも言って、許しだけ貰い、出て行く予定でいた。
昼過ぎになったインターホン。
「ねぇっ!ちゃんと説明してっ!家康っ!家康っ!」
扉の向こうで泣き叫ぶひまり。
ごめん、ごめんって何度も心の中で謝った。寒い中、外にいるかと思えば今すぐにでも抱き締めたくなって、胸が張り裂けそうなぐらい辛くて……
(早く、どうしようもない男だって気づいて……俺を嫌いになってくれても構わない)
ただ必死に居留守を使って息を殺して、扉に背中を預けた。新月まで、俺の心は壊れないでちゃんとあるだろうか。
ーー………話がある。
遊園地の時、神木にそう言われのこのこ着いて行った自分に腹が立つ。
ーー単刀直入に言う。今度の新月、ひまりは天女になる。
ーーは?いきなり何言って……。
一瞬耳を疑った俺は、神木が頭でもおかしくなったのかと思った。
けど……
ーー信じる信じないのは自由。ただ……左目痛むんだろう?
ーー…………。
ーー…………それは、ひまりを抱いたから……ひまりと交わりを持っていいのは本来俺だけだった。神の生まれ変わり持つ……宿命を持った俺だけが許される行為。
神木は目を伏せそう言うと……
ーー花が満開に育った時。それは、二人にとって別れを意味する。今度、抱いたらそれが分かると思う。
ーー花……?一体何の話をしてっ!
ーー信じられないだろうが……ひまりは……天女でありそして…………。
神木はその先を告げるの迷っている様子だった。そして、話を切り替えるように真剣な表情を浮かべ……
ーーその証拠に……ワームホールを呼び起こす。決めるのは徳川……君だよ。このまま一緒にいれば、間違いなく大変なことになる。
俺に苦渋の決断を迫った。