第268章 天邪鬼の愛〜真紅〜(10)
スッと伸びてきた指先。
弾かれた涙。
それにつられるように上を向けば、悲しそうに笑う家康がそこにいた。
「ひまりと話せなくなって……やばかった。でも、喜ばせたくて……」
信康くんと一緒に居たのは流石に驚いたって、眉間に皺を寄せるのはいつもの家康。私がプレゼントを開けてもいいかと尋ねると、家康はどうぞって言って微笑んでくれる。
パレードも景色もそっちのけで、私はゆっくりと緑色のリボンを解く。少し皺になった赤い包装紙を開けて、中から出てきた赤いジュエリーボックスにゆっくりと手を掛けた。
「……可愛い…………」
中に入っていたのは、シルバーの三日月がモチーフになったイヤリング。三日月の先端には雪の結晶の小さなモチーフが付いていて、その中心部に埋め込まれていたピンクダイヤ。手に取りゆっくりと目線の高さまで持ち上げたら、揺ら揺らと三日月のモチーフが揺れてピンクダイヤがキラリと光った。
「あのポスターのネックレスにしようか悩んだけど……同じシリーズのこっちにした」
ネックレスはちょっと予算オーバー。って、高校生らしい表情を見せた家康はイヤリングを手に取ると……
「……つけてあげる」
私の髪を耳にかけて、イヤリングを付けてくれる。
「……似合ってる」
「ありが……と、う……」
また泣きそうになる前に私は精一杯の笑顔を見せて、「メリークリスマス」そう言いながら、紙袋を家康に渡した。