第267章 天邪鬼の愛〜真紅〜(9)
遊園地に辿り着いたのは、
夕方の五時頃。
二枚ある入場券の一枚を出して、俺は走り出す。園内はすごい人で溢れ、虱潰しに探した。
ジェットコースター、メリーゴランド……ひまりが乗りそうな乗り物を一つ一つ回りながら……
(くそっ……何処だ。……俺は何を忘れている!)
ーーや、く、そくだよっ!
ズキズキと痛む左目。
一体、何でこんな事に……。
理由は簡単。自分が見え張って嘘を吐いたりしたからだ。遊園地に居る保証なんて何処にもないのに、痛む左目が皮肉にも教えてくれる。
大切な約束を忘れていると。
「もうすぐパレードが始まります」
流れた園内放送。
雪が降って、誰もが寒そうにぬくもりを求めている中、俺は一人汗だくで駆けずり回った。
携帯に書き記した筈の何か……
ひまりと交わした約束を必死に思い出そうと、暗くなった空を見上げた時。
ふと目に入った大観覧車。
「特別乗車券をお持ちの方は、こちらへお越しください!」
ドクンッ!
(特別乗車券…………)
記憶に引っかかったその言葉。
長者の列に並んだカップル達。
その中で見つけた……
「はい!次の方、ここに来てください!」
見覚えのある白いダッフルコート。
「ごめんなさいっ!やっぱり……」
その声に俺の身体が反応する。
何で神木と一緒に居るのか……
グイッ!!
「乗りますっ!!」
聞きたくて溜まんなかったけど、先にゴンドラに乗り込み……
「ひまり……」
冷え切った体を温めた。