第264章 天邪鬼の愛〜真紅〜(6)
クリスマスイブ前日。
眠れない夜を過ごしていた俺はだるい体を起こして布団から出ると、ベットの上に腰掛け、寝癖の付いた髪を整えながら携帯を開く。
(………………)
画面は何も表示がない。
着信もメール受信もゼロ。
(はぁー…………来るはずないか)
結局気まずいまま、迎えた冬休み。何度も本当のことを話そうと思ったけど、何て声かけたら良いのか分かんなくて、クリスマスびっくりさせたくて。そんな下らない事を天秤にかけてる内に、余計に悪化して……気づいたら下校まで別々に。
(今日も冷える……)
カーテンから霜がついた窓を見て、俺のため息交じりの吐息は室内にも関わらず白くなる。分かってる。いつまでもこんな事をしてたって余計にこじれるだけで、無意味だって。分かってんのに……頭の中はひまりの事で埋め尽くしてんのに……連絡できないまま。
あからさまに避けられて……
俺も色々聞かれたら正直に話すしか出来なくて、つい自分から話すのを躊躇っていた。
ーーお前ら、何か喧嘩したのか?
政宗にまで心配されて、本当情けない。
まさかクリスマスプレゼント買うのに家庭教師のアルバイトをしてて、バイトの日を半分以上予備校って嘘ついて、それをひまりに変な勘違いされたままとか……自業自得過ぎて言えるわけないし。
俺はもう一度カーテンを閉めると、勉強机の引き出しからある物を取り出す。
北海道で作ったオルゴール。
蓋を開けば鳴り出すメロディ。