第262章 天邪鬼の愛〜真紅〜(4)家康様side
12月25日はクリスマス。
幼馴染として毎年過ごしていたクリスマスとは、今年は違う。恋人同士になって初めてのクリスマス……
特別な夜にしたかった。
テスト期間に入ったある日。
俺は教室前で携帯のカレンダーを見て、一人にやつく。するとたまたま通りがかった秀吉先輩に見つかったらしく「随分、機嫌が良いじゃないか」と揶揄われた。
「どうせ、ひまりと過ごすクリスマスの事でも考えてたんだろう?」
「……べ、別に。……ちょっと予定を確認してただけです」
いきなり図星を突かれ、俺は慌てて携帯の画面に指を滑らせ、ホーム画面に戻そうと動かす。するとその時に、画面上に『削除しました』というメッセージが出て……
(あれ?今、何を削除したんだ)
俺は頭を横にする。けれど隣から秀吉先輩が覗き込もうとするのを見て、慌てて画面を消した。
「……悪趣味ですよ」
俺はぶっきら棒にそう呟いて、顔を背ける。
「そう勿体ぶるなって。まぁ、良いけどな。それよりも、だ。最近、ひまりと帰ってないみたいだな。イベント前に喧嘩でもしたか?」
「……してません。ちょっと予備校が忙しくて……余計なお世話焼かないで貰えます?」
ある事を内緒にしていた俺は咄嗟にそう答えた。ひまりにまで嘘ついている以上、秀吉先輩に本当の事を話す訳にはいかない。俺はしらっと携帯を無造作にポケットの中に放り込み、序でに手も一緒に入れる。
「帰りは政宗に頼んであるので、ご心配なく」
「何を隠しているのか知らないが、嘘はほどほどにしとけ。後で面倒な事になるぞ」
子供扱いするように秀吉先輩は俺の髪をくしゃっとすると、「分かったな?」そう言い残して、最初から聞く気がないのか返事も聞かずに階段がある方向へと歩いて行った。