第261章 天邪鬼の愛〜真紅〜(3)
でもきっと何か事情があるはず。
親戚じゃなくても、知り合いなのもしれない。
(でも……)
信じてる。でも……
きっと事情があるはず。でも……
でも、でも、でも……。
そう言い聞かせても、何よりも嘘を吐かれたことがショックで、心のダメージが大きかった。
家康が中に入ってから、3分が経って、10分が経って、30分が経って。
「帰ろう……」
私は静かに隣に居てくれたゆっちゃんの腕を引っ張った。ゆっちゃんは「出てきて問い詰める!」って言って動いてくれなかったけど、私が何度も首を横に振り、冷たくなった手で鞄をぎゅっと握りしめると……
「……わかった」
明かりの点いた一部屋を見上げ、俯いた私の頭を優しく撫でてくれる。
「家康に今度、聞いてみるから。ゆっちゃんは心配しないでね」
「ひまり……」
いつも元気なゆっちゃんの表情が曇るのを見て、私は一生懸命に笑顔を集めてつくった。テストが終わったらちゃんと聞こう。きっと聞けば家康も話してくれる筈。
テスト最終日、付き合って三ヶ月。
恋人同士にとって、一番気をつけないといけない時期だって雑誌とかに書いてあるのを見たことがある。でも、私達なら大丈夫だって思ってた。
なのに当日。
「何で嘘なんか吐いたりしたのっ!!」
楽しみにしていた記念日。
口を重く閉ざした家康に私は涙を流す。
約束したのに。
一緒に過ごそうって。
なのに家康は忘れてて、
慌てて携帯のカレンダーを開いて……
「……ごめん」
すごい辛そうな顔をして謝った。私はもう涙でぐちゃぐちゃでその場から逃げるように走り去るので精一杯で。
気がつけば口を聞かないまま、終業式になっていた。