第261章 天邪鬼の愛〜真紅〜(3)
寒さを迎えた季節。
木々は白く光り輝き、空気は澄み渡り、ちょっとした吐息さえも白く染めてゆく。
いよいよ、
明日からテストが始まる。
「今日、予備校って言ってたんだよね?」
「う、うん。だから、政宗と一緒に先に帰るように言われたけど」
「よし!後を追うわよ!」
「でもっ!テスト勉強しないといけないし!……この前だって……本当に予備校だったよ」
だんだん、小さくなる語尾。自信がないわけじゃない。寧ろその反対。ただ、ゆっちゃんが聞いた……
ーー徳川!美人妻の所に通ってるらしいよ!!
噂によると、ある団地の家に家康が出入りしているみたいで……。そんなのただの見間違いか何かだって言っても、クラスの子で何人か見た子がいるからって……一度だけ後をつけてしまった。
その罪悪感から胸がズキズキと痛む。
「デマだってことちゃんと証明しないと!私だって疑ってないわよ!あんなにひまりが好きな徳川が浮気なんかする訳ないじゃない!」
「ゆ、ゆっちゃん!声が大きいっ!」
「ほら!行くわよ!チラッと確認するだけだからっ!」
私の鞄を奪い、歩き出すゆっちゃん。そんな噂が流れている事に凄い怒っていて、家康の無実を証明するって張り切ってくれてるのは、嬉しいんだけど……。
ーーえ?今日も一緒に帰れないの?
ーー最近、予備校の日数増えて。暗くなるの早いし、政宗にひまりのこと頼んであるから。
先月から度々そんな日が続いていたのは確か。政宗に聞いてもやっぱり予備校みたいで、噂を聞くまではそこまで気にしてなかった。家康だって普段通りだったし……
(今日確かめて、ちゃんと終わりにしよう!きっと、何かの間違いだって!)
少し弱気になりかけた私は、ぶんぶんと左右に頭を振り、政宗に用事がある事をメールして、ズンズンと前を歩くゆっちゃんの後を追う。
ただ……火のない所に煙は立たないってことわざがあるぐらいだから、大なり小なり不安はあった。