第256章 『一周年記念作品』学園祭♡一日目(後編)
ものの数秒後には校門から出て行った後ろ姿。一度も振り返らずに戦国学園を後にした。
「……行っちゃった」
「……何なの。あれ」
ひまりはグランドに伸びた二つの影を見て、クスリと笑う。
「よく分からないけど……きっと、迷ってたのかな?自分で決められなくて」
「一体……何の話?」
「ふふっ!内緒!……あ!ねえねえ!参加賞で貰った映画のチケット!折角だから皆んなで一緒に行こうよ!」
「あいつらと一緒のこと言ってるし」
本来は二人っきりで行きたかった家康。しかし、ひまりの夕焼け空バックにした満面の笑顔に言葉を呑み込む。
(……今回だけね)
やれやれと肩を竦め、優しい笑顔を返す。するとたちまちパァっと明るい笑顔が咲いた。
さて明日は学園祭二日目。
どんなイベントになるかは……
(よしっ!こうして!あーして!)
まだ誰も知らない。
机の上に置かれたぐるぐる眼鏡と万年筆。それは思い出もこれから先の未来も綴られてゆく。
〜学園祭一日目〜fin〜