第253章 『一周年記念作品』※告白シチュエーション①
ナレーション___
『出会いは部活の体験入部。そして入部後、揶揄われたり、優しくされたり、世話をやかれたりする内に先輩の男らしい一面に惹かれた後輩は、この秋に思い切って告白。色づく紅葉のように恋が実り、恋人関係になった二人だったが……』
〜もし彼女が後輩だったら!?〜
いつもと変わらない、騒ついた教室の昼休み。物語の始まりは届いた一件のメール。彼女である弓乃から……「今日は一緒に帰れない」という内容だった。
2年B組の教室……
部活のない今日。
嫌味か?と、
言いたくなる程の小春日和。
そう思うのは……あいつからきた一件のメールを見た所為……とは、言いたくねえが。多分そうだろうな。
俺は携帯の角まで親指を動かすと、ボタンを押す。するとメールが表示されていた画面が瞬く間に消え、黒い画面表示に変化。
(ったく。誰だ?……朝練の時に、天気が良いから今日は寄り道して帰りたいとか言ってたヤツ)
今朝の下駄箱での会話を思い出しながら、携帯をポケットに突っ込むと背後に気配を感じ……
「何だ……お前か…」
首を動かせば、同じクラスの佐助が鼻を滑り落ちそうになるいかにも理系っぽい眼鏡を左手で押し上げ、立っていた。
何の用だよ。
そう尋ねると、
「少し変な噂を聞いたんだ。……最近、後輩の彼女と上手くいってるのか?」
「変な噂だ?……上手くいってるも何も恋人になったからって、特に変わってねえよ」
相変わらず、先輩って呼びやがるし。負けん気強い強情な性格してっから、甘えたりベタベタしてくるわけじゃねえ。
それにまだ、付き合って二週間程度。
上手くいってるかと聞かれる程、月日は経ってない。俺は佐助に特に変わりないことだけ告げると、その変な噂って何だ?と尋ねる。
その瞬間……
「いや。それなら構わない。今のは忘れてくれ」
眼鏡の奥に潜む目つきが鋭いものに変わったのを見過ごすほど俺は馬鹿じゃねえ。
「……お前の情報はアテになるかな。喋れよ」
五限目の始まりを告げるチャイムが鳴り出す前に、口を割らせた。