第252章 『一周年記念作品』学園祭♡一日目(前編)
扉が開いた瞬間……
「ちょっと何でっ脱ごうとしてんのよっ!」
「あぁ?ンなもん、暑いからに決まってんだろ?」
仲良く登場……には、至らなかった二人。羽織っていたコーチジャケットに手をかけ脱ごうとする政宗。それを必死に阻止しようと隣で手を伸ばす弓乃。
「これが一番のリンクポイントなのに!脱いでどーすんのよっ!ばかっ!」
「お前なぁ……」
「「「「……………」」」」
注目される中、痴話喧嘩が勃発。
扉が開いているのに全く気づいてない弓乃は、何かを思い出すように目を閉じて顔の前で拳をつくるとぷるぷると震わせた。瞼の奥に浮かんだスクリーン。そこには、この日の為にファッション雑誌を買い占め、少しでも政宗に似合う彼女になれるように研究し続けた自分の姿。
「セクシー路線にいくにもこの幼児体形じゃ……ワイルド女子も上級者過ぎて無理だし……こっちは必死に…っ」
うっかり声に出して語り出す。
観客席にいる生徒はポカーンと口を開け、数秒後には「ブッ!」吹き出した。
そこで漸く状況に気づく。
「へっ……って!扉、開いてんじゃん!!」
「……みたいだな。お前がどれだけ俺のこと好きか……聞かれてたぜ?」
晴れた日に見える海底のような青い瞳。そんな政宗の瞳に覗き込まれ、気が動転してあたふためいていた弓乃は金縛りにあったように固まる。そして、頬を海に沈む夕日のように赤く染めた。
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(バカ野郎。そんな顔、他の奴に見せんなよ)
弓乃の被っていた黒色キャップのツバを掴み政宗はグッと目元が隠れるか隠れないかぐらいの絶妙な位置に下げると……
「さっさと行くぞ」
黒のコーチジャケットを脱ぎ、無造作に右肩に乗せ……掴まれよ。そう告げるかのように動かせた、左腕。
「組みたかったんだろ?」
弓乃が悔しそうな顔をすれば、政宗は満足げに笑う。逞しい腕に絡まった両腕。政宗は更に満足そうに笑うと、手をズボンのポケットに突っ込み、ランウェイを歩き始めた。