第250章 天邪鬼の愛〜中紅花〜最終章
際限なく星を降らせる天空の下。
秋の夜は冷え込みもきつい。
時刻はもうすぐ、午後8時。
撮影の帰り道。私と家康は今度の学園祭の服装を相談したり、部活の話をしたり、今日の撮影の話をしたり、話が尽きることなく会話も足取りも進む。
「この前ね!雑誌特集に載ってたんだけど、付き合って三ヶ月はカップルの運命の分岐点なんだって」
「……ふーん」
「ゆっちゃんと一緒に読んでて、そしたらいつの間にか築城さんも加わってね?さんざん脅されちゃった。……『魔の三ヶ月は、気をつけなさいよ』って!」
「……何それ」
「ふふっ。でも、それって良く考えたら心配してくれてるって事でしょ?そう、思ったら嬉しくって」
家康は殆ど相槌を打つことが多いけど、決して適当とかじゃなくてちゃんと話を聞いてくれる。
その証拠に……
「そっかぁ……。用事なら仕方ないよね」
記念日の日に用事があると聞き、私の声のトーンが少し落ちただけで足を止めてくれて……
「……今度、必ず埋め合わせするから」
繋がった手の力が強くなった。
今歩いている歩道は、ひと気も少ない何の変哲もない場所。感覚をあけて付けられた街灯は、大きな楕円形の光になって足元を照らしてくれる。でも、駅に近づくと一気に辺りは明るさを増して、休日の夜は普段の帰り道よりも賑やか。
「そう言えば眼鏡くん。どうして席替えしてもいつも同じ席なのかな?」
「……くじ運悪いか良いかのどっちかじゃない?」
ゆっくりと歩く恋人達、飲み屋さんに向かう集団、買い物帰りの学生たち。その人波につかまることがないように隣から手を引かれ、上手に距離をとりつつ通りを歩いていると……
ある店から出てきた見覚えある人影。
「あ!秀吉先輩!」
「何で、明智先生まで」
くるりと方向転換しようとする家康の腕を引っ張って、私は二人に手を振りながら駆け寄る。