第246章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(33)時が繫がるルージュ編
私達はこの後の事を相談し合う。時間を待って貰った以上、これ以上は編集長さん達に迷惑をかけないように自分達で出来る所まではしようと二人で決め、でも流石にこのままはまずいよね?って、事になって……。
背中に回っていた腕がふと緩くなる。
ん?と、思って顔を上げるとそこには眉を寄せた家康。どうしたの?って、私が聞く前に少し顔を横向けると……
「どんな、撮影するかは知らないけど……こんな甘い香りするひまりをアイツに触らせたくない」
ちょっと神妙な顔つきを浮かべる。
(アイツ???)
キョトンとして首を傾げると、鼻をむぎゅと指で挟まれた。家康はシャワールームの場所をスタイリストさんから聞いて知っているみたいで、私達はいそいそと準備。
「ふふっ。……ふわふわ猫っ毛に戻ってる」
私は家康が着てきたパーカーを借りてカツラ付けた頭を少し気にしながら、スポッと顔を出す。すると、隣で髪を弄っていた家康は眉を寄せて、ソファから立ち上がり……
「………アイロンだっけ?また、アレされるとか………勘弁して欲しい」
引っ張られるし熱いとか、ヘアセットの時のことをうんざりした様子で話す。
クスッ。
「私で良かったらするよ?……ほら、アイロンも鏡の前に置い………」
笑いながら、鏡の前に視線を走らせると、片方だけ出していた腕を着物の袖の中に戻す家康の姿が映り込んで………次の瞬間、息を呑んで目を見開く。
(今の……大きな痣……)
ゆっくり立ち上がると、
無言のまま私は……
「コンタクトも一回きりのヤツらしいから後で貰って……っ……」
後ろを向いた家康の……背中に触れる。今は着物で隠れてしまった怪我がある所に。おじさんからはちゃんと聞いてはいた。背中の怪我が一番酷くて、治るのにも時間がかかるって。