第242章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(29)時が繋がるルージュ編
いつもの長い栗色の髪と茶色の瞳。
それが一変に変わって……
「本気で誰にも見せたくないんだけど。……どうすんの?」
顎を持ち上げて至近距離で見つめれば、戸惑ったように「もしかして変だった?」とか的外れのこと聞いてくるし、違うって言ったら何か言いかけて口をつむぎ眉を寄せて困ったように視線逸らすし……
(その表情一つ一つだけでも、どれだけ……)
こんな綺麗で可愛いお姫様。
誰にも見て欲しくない。
普段もかなり可愛いけど、こう急にイメージが変わるとまた違う可愛さがあって……つい普段言えない言葉がスルスルと口から飛び出す。
「こんな所で、だ、だめだってば///」
「なら、撮影中止して」
着物の裾を割って手を忍ばせて、吸い付くような白い頸に吸い寄せられるように俺は顔を埋める。すると、流石にひまりは本気で抵抗してきて腕を突っ張り、頬の中に風船を入れ込んだみたいにぷぅと膨らませた。
「そんな途中でやめれないよっ!迷惑がかかっちゃう!」
「なら俺には迷惑、掛けていいわけ?」
「どうして家康に迷惑かかるの?」
膨らませていた頬をしぼませ、心底不思議そうに首を傾げるひまり。俺は後頭部を引き寄せ……
「掛かるよ。そんなに……」
直視しながらでは、
とても言えない台詞。
それを囁こうとした時、
バンッ!ゴンッ!
「っ!!」
後頭部に重い衝撃。
ズリッ……思わず壁に額をくっ付けるように正面から寄りかかると、ひまりは俺の後ろに回る。
「家康!だいじょ……」
「ん?…今、何かがあたったような……ハッ!もしやひまり先輩!?ですか!?一瞬、どなたか分かりませんでした。スタッフのかたがお待ちですよ!」
「驚いたっ!別人みたいね!」
「え?え?」
俺の背中に触れていた温もりが消え、
「家康先輩?どうかなさったのですか?……目ではなくて頭でもチカチカしましたか?」
ニコッ。
そう効果音が聞こえそうなぐらい、
三成は扉を片手に笑う。
(っとに、覚えてなよっ……)
腹黒エンジェル降臨した。