第53章 風待ち月(2)
梅雨の時期に入った朝。
雨が降る前兆のような、生暖かい風を頬に感じる。
私は折り畳み傘を持ったか確認しながら、
カシャン。
「おはよう!」
朝練が参加出来る喜びと、
「……おはよ。って、朝電話で聞いたし」
家康とまた登校出来る事が嬉しくて、自然と足は浮きだった。
駅のベンチで電車を待つ間、私は六月の一大イベントに一人盛り上がり、準備物の確認をしようと手帳を開く。
全学年合同での野外活動。
一年生と三年生は、二泊三日。
そして私達二年生は秋に修学旅行が控えている為、一泊二日のみ。
初日は自然体験をして二日目は周辺散策をする予定。
「すっごく楽しみ!」
「梅雨時期に山行くとか、ありえない」
「ん〜。確かに、ちょっと天気は心配かも」
来週の天気予報は今の所、雨。
なら、てるてる坊主作ろうよ!と私が言うと、そんな小学生の遠足みたいなの絶対やだ。と断られた。
むぅ。と剥れていると、前方から三成君が歩いてくるのが見えて私は名前を呼び手を振る。
「おはよう!朝早いね!三成君も今日から朝練参加?」
「はい。秀吉先輩から連絡を頂きまして」
上達が早い三成君は、秀吉先輩のお気に入り。一年生の中で一人ずば抜けた才能を持っていて、即戦力となり、今夏の大会も個人戦で急遽出場が決まったと、この前聞いた。
「なら、これからは一緒に登校出来るね!」
「宜しいのですか?ご一緒しても?」
「もちろんだよ!」
って言っても、駅のすぐ近くに住んでいる三成君。待ち合わせは自然と駅になっちゃうけどね。
「何勝手に決めてんの」
いつの間にか背後に立っていた家康。
私は肩を掴まれ、到着した電車の中に連れて行かれる。
「わぁっ!三成君も一緒に……っ!」
「三成は乗らなくて良い」
「次の電車では、間に合いませんのでご一緒させて貰います」