第238章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(25)時が繋がるルージュ編
職員室___
文化祭の後片付けも終わり、生徒も教師もいなくなった七時頃。
今回の事件の報告を終えた信長。
遅くまで 一人残りデスクの上で明日、配布予定のプリントに目を通す。
(そろそろ調べ終わった頃か……)
ギィと椅子を後ろに引き立ち上がると、デスクの上に置いていた盗まれた空き教室の鍵を掴む。それを元の場に戻すと、職員室の戸締りと防犯センサーを起動させてある場所へと向かった。
学園長室と書かれたプレート。
職員室から出て、左奥を突き進んだ先にひっそりと存在する部屋だ。普段は滅多に誰も足を踏み入れない。
そんな部屋の中電気も点けずに、無我夢中でキーボードをカタカタと鳴らす佐助の姿。信長は中に居るのは分かっているという様子で声も掛けずに重圧な扉を開き……
「……どうだ」
頑丈で磨きのかかった高級なデスク前に足を進め、たった一言。そう、尋ねる。
佐助はパソコンの画面を凝視したまま、眼鏡を一度取り、疲れた目を休めるような仕草をするときっちりと掛け直す。
「…………やはり、彼女は」
重い口を開くようにそう告げた後、ノートパソコンの画面を信長の方に向けた。
「……そうか」
「ひまりさんは、恐らくこの事実を知らない」
「……だろうな」
「良く気づかれましたね」
「事件に巻き込まれたと親に連絡入れた時に、少し様子が気になってな」
画面を一瞥すると信長はデスクに凭れ腕を組むと、黒い髪を少し下に落とす。佐助は「生徒個人情報」と表示されたノートパソコンを閉じると、自分は引き続き石の異変や、三つの神器を調べ、書物の行方も探すと告げ……
「警察に通報した彼の動向も探ります」
「俺は今から家康の元へ行く」
二人は学園長室を後にした。