第218章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(5)
好きな人のお嫁さん。
その人の為に、その人に見て貰う為に、自分でドレスを製作出来たら……
(本当に素敵……。その為には、色々頑張らないとね!)
憧れであり、約束であり、大きな夢。
明日の衣装も、
ちょっとした予行練習になったかな?
なんて考えていると、
電話を終えた家康が戻って来て……
ガラスから顔を離そうとした時。
(え……?今のって……っ!!)
ある事に気付き、びっくりして凄い声が出そうになる。一瞬、見間違いかと思って、怖いもの見たさみたいに……
おそるおそる振り返った。
ガラスに越し映った背後のビル。
十階建てぐらいある高い建物の、一番上に飾られた看板。
それを今度はちゃんとしっかり、見て……目を疑って、パチパチ何度も瞬き繰り返した後……
大きく息を吸って……
「あっーーー!!」
今度こそ、大絶叫。
「い、家康!家康っ!!」
「ちょっ!いきなり大声出して、何をそんなに………」
「あれ!あれ!あれーっ!」
完全にパニックを起こす、私。
「え?何?どれのこと……………っ!!!」
家康もその看板を見て、
目を見張って固まる。
「あれって……もしかして、二人?」
信康くんの声は、
人混みにかき消され……
私たちは、顔を見合わせ思わず顔を赤くして、はにかんで、困った顔もして、最後は笑った。
聖夜の夜……
『時を越えるルージュ』
八つ切りショットの看板。
その真ん中に、
一番大きく引き伸ばされた一枚。
ベビーピンクのルージュ。
二人で白いシーツを被り……
瞼を閉じてキス顔をする私の唇は、ベビーピンクに染まり、その前でルージュを片手に持ち、ギリギリまで顔を近づけ……今にもキスを落としそうな、伏せ目をした家康が映っていた。
「ちょっと!あの二人!!そうじゃない!?」
「え?まじで?本物?」
そそくさと、私達はその場から退散。
まだ、付き合う前のルージュ撮影。
クリスマス時期が近づいて
……もしかして、解禁?
この話は、また文化祭後に続く。