第214章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(1)〜
『中紅花(なかくれない)』とは、
明るい薄みの紅色のこと。
平安時代の式目『延喜式 』にもその名が記された由緒ある伝統色。そんな、紅花だけで染められた薄い紅色のように、二人はある感情で愛の色を染めだす。
朝のホームルーム。
相変わらず騒がしい教室。
近々、開催される文化祭の準備で、生徒は浮き立っていた。
「……転校生を紹介する」
信長の一言で、
全員が黒板の方に視線を向ける。
ガラッと扉が開き……
中に入ってきた、
赤い瞳と前髪で隠された瞳。
ひまりは、
驚かずにはいられなかった。
「神木信康(かみきのぶやす)です。宜しく」
穏やかな笑み。柔らかい声。
そして、赤い瞳は……
ゆっくりとひまりの方へと動く。
家康はそれを見て
途端に、眉間に皺を寄せた。
『中紅花』
まだ真紅には、届かない二人の愛。
晩秋からクリスマス……
二人の胸を熱く焦がして、
染める感情……
その名は、一体……。