第209章 『デートって何?』後編
「真実」
それは、時を戻らない限り。
戦国姫のように、時を越えない限り……知ることは出来ないであろう。
「歴史って……。まるで夢みたいですね」
ひまりはポツリと声を出し、ゆっくりと足を動かす。
「夢か……。何故、そう思う」
「歴史って、こうだったかもしれない、こうじゃないかもしれない……憶測はできても確定はなかなか難しくて、真実はその時にしかない……確か、先生も以前言っていましたよね?」
以前、ひまりが赤点で補習を受けた時。信長もこれに近いを言っていた。戦国学園の専属教師を申し出たのは、ひまり達を待っていたからだったが、歴史の教科を選択したのは自分の意思。
教科等で習う歴史「通説」では、織田信長は本能寺の編で亡命。現に墓も石碑もある。しかし、書物の中では織田信長は生存していた。全く別の歴史。
だからこそ、興味が湧いたのだ。
「でも、一つの発見。資料、遺跡、遺物が出てきて、そこから色々な説が生みだされ、またそこから広がる……」
それが夢に似ていると話す。
一つの目標、一つの原点があり、そこから色々な努力や思考がうまれ、想像が広がる。
「そう思うと、何だか、歴史と夢。似ているかなって」
最後にそう呟き、
石垣の前に立てば、
「……確かに、似ているかもしれんな。だがな。あの書物は存在する。それは紛れも無い事実だ」
(先生……)
頭に優しい重みが乗せられ……
右手で石に触れれば、
「あと、俺のお姫様は間違いなくひまり。それも事実だから」
(家康……)
その上に温かい左手が添えられた。