第206章 天邪鬼の愛〜聴色〜最終章〜
付き合って一ヶ月……
聴色のように、
淡くてほんのりしたピンク色。
キス禁止令から始まった、
紅葉の綺麗な秋。
「ご褒美。楽しみにしてる」
「うっ///でも、約束。ちょっと破ったよ?」
毎日、幸せで……
ずっとこんな日が続いて欲しい。
ううん。続くんだろうなって……
胸はいっぱいに膨らむ。
「約束?」
「もう!とぼけたフリしても駄目だよ!……だって、試合中…左目。痛そうだった。無理しないって、約束したのに」
心配してたんだから。
バスに向かう途中。
ぽつりとそう呟くと……
家康の足がゆっくり止まる。
私は振り返りながら、
首を傾けて
どうしたの?って。
そしたら……
「……何でもない」
その笑顔が……
一瞬だけ……
少し曇った理由は、わからなかった。
「家康。頑張ったな」
「クッ。一射目を外した時は、どうなるかと思ったがな」
バスの前に立っていた秀吉先輩と明智先生。家康の肩にポンっと手を置いて、声を掛ける、その近くで……
「三成くん?どうしたの?さっきから、キョロキョロして?」
「いえ。ここに来る前に、家康先輩が会場の裏手に歩いて行くのが見えたのですが……見間違いでしょうか?」
「家康なら、着替えて更衣室出てきてからは……ずっと私といたよ?」
それに会場裏って……
確か、何にもないよね?
「三成。お前、寝ぼけてたんじゃねえか?普段からまともに寝てない上。毎晩、副部長と電話してるらしいな?」
頬を少し染めた三成くんの肩を抱き、政宗は揶揄うように頭を小突く。
私はクスクス笑いながらバスに乗り込むと、織田先生が手招きするのが見えて、私は一番前に移動。
「たまには、俺の隣に来い」
「お説教はやめて下さいね?」
「それは、今度やるテストの結果を見てからだ」
ニヤリと笑う織田先生に苦笑い。
この後、すぐに家康がやってきて……
結局。私は一番、後ろの席に。
「「「打ち上げーーっ!」」」
メダルの重みと同じぐらい、
「スゥ……」
優しい重みを肩に乗せて。
バスは走り出した。
「……悪戯じゃなかったら、良いよな?」
「イタズラにしとくか」
二つの影を置いて……
〜聴色〜(完)