第194章 〜エピローグ〜
職員室___
残暑が遠のくと、その窓から見える光景は、露骨に秋らしい季節の色。
十月の中旬……
透き通った風が中に舞い込む。
つい先程、深く蒼く澄んでいた空に赤みが混じり始めた。
「また、貴様か。まさか、再びワームホールが現れたとでも、告げにきたのではないだろうな?」
「いえ。……以前、誤魔化されことをもう一度、尋ねにきました」
佐助は窓に近づく。
信長は背を窓横の壁に預け、ズボンの中に両手を入れ、緩んだ赤いネクタイを靡かせる。
「……俺は、誤魔化した覚えなどない」
「たまたま。に、しては偶然の領域を越しています。彼女が持っていたレプリカに嵌めた宝石。石碑の裏にも、確かに三つ石が埋まっている」
「だから、何だ?」
「……長年、研究を続けていた父でさえ、気づけなかった。約五百年の時を経て、石碑自体の表面も劣化、石も色が風化でくすみ、一体化していて……人の目ではとても判断出来ない」
佐助は、金属探知機のような特殊な道具で石碑の裏を調べて、発見。
「アレは、翡翠。さすがに硬玉か軟玉かまでは……埋まっている状態では、判断出来ませんが」
そちらの専門知識は疎いので。
ただ、
「翡翠」と呼ばれる石は、化学組成の違いから硬玉(ヒスイ輝く石)と、軟玉(ネフライト)に分かれ、全く別の鉱物。
それぐらいの知識は、佐助も持ち合わせていた。
「書物の中に、戦国姫は、翡翠の指輪、翡翠の耳飾りを……永遠の愛を誓った時に付けていたと、記されていました」
しかし……
佐助は一旦、話しを区切り……
眼鏡を持ち上げる。
いつもと変わらぬ無表情。
しかし、眼鏡に隠れた瞳の奥には、強い光。
「石碑に埋めたとは、一言も記されていない」
貴方は何故、
それを知っていたのですか。