第192章 〜おまけエピソード(3)〜※R18
沈んだスプリング。
乱れた真っ白のシーツ。
そこに埋もれた、
(………かわい)
可愛いお姫様の寝顔を見つめる。
柔らかい頬。
指先で軽く一度だけ突く。
切なげに揺れる長い睫毛。
くの字に曲げた指で、
涙の跡を辿り…
へばりついた前髪。
それをそっと掻き上げれば、
濃厚な蜜が漂う。
しっかりと記憶の中に、
この光景を刻み……
その香りに誘われるように、露わになった、額に唇を寄せた。
ゆっくりと身体を起こし、弾まないように、静かにベッドから下りる。
先ずは、ソファに脱ぎ捨てた自分の服を拾う。少し躊躇いがちにある物も拾い、クローゼットの中からパーカーを取り出すと……
その中に拾った物を包み、
ベッドの下に置いておく。
携帯で時間を確認。
窓まで移動して、カーテンを少し開ければ、部屋に赤い光が舞い込んだ。
(そろそろ。帰ってきそう)
背後から聞こえた、
スヤスヤと、規則正しい寝息。
俺はベッドに視線を向け、
細く笑みを浮かべると……
ベルトをカチッとはめ、まだ余韻が残る汗ばんだ肌の上に、素早くカットソーを切る。
着替えを終えた頃。
「キャンキャン!!」
階段を登ってくる小さな足音。
(……鳴き声は大きいけど)
扉の前に移動してドアノブを回し、数センチだけ開け、脚で部屋に押し入ろうとする愛犬を阻止。
腕が入るぐらいまで、扉を開く。
前のめりに背中を屈め、腕を伸ばして、ヒョイッと抱き上げると……
「残念。……今は、俺だけの」
鼻息を荒くして、俺の手から脱出を試みるワサビを連れて……
(普通に寝てるって、言うしかないか)
潔く、言い訳一つ考えずに
リビングに向かった。
〜おまけエピソード(3)〜完〜