第190章 〜おまけエピソード(1)〜
時は、秋から冬にかけて……
まだ、始まったばかりの……
二人の甘い学園生活。
「ふふっ。起きた?」
「……起きた。おはよ」
二人は別々のベットの上で、
朝の挨拶を交わす。
時間にすれば、ほんの二、三分。
「なら、着替えるから切るね」
「……切らなくていい」
「もうっ///」
それでも、幸せな時間だった。
ひまりは学校に行く前に必ず……
オルゴールを開き、指輪を取り出す。
(そう言えば、いつ買ってたのかな?)
多分、北海道で買ってくれたんだよね?
ふと、疑問に思う。
離れた時間と言えば、つつじとオルゴール館の前で話し込んでた時ぐらいだったが……。
ひまりは首を傾げ、また今度聞いてみよう。そう思い、指輪を元に戻して蓋を閉じた。
「あ!そうだ!つつじさんと言えば!」
慌てて、もこもこ素材のトートバックの中を覗く。昨夜、遊園地で購入した物。いかにも小学生が好きそうな、可愛いハロウィンバージョンの絵葉書。
改めて着物のお礼を書いて、
孫娘の縁に送ろうと思っていた。
それと、あのボロボロになった文を書物に挟んで、スクール鞄の中に仕舞う。
「佐助くん、今日いるかな?ん〜神出鬼没だしなぁ…」
ひまりは、
相談しようと思っていた。
この文を、
もう一度石碑に埋めなおさないかと。
「おはよう!部長?今日の鬼朝練メニューは?」
「基礎練。取り敢えず男子は、腕立て伏せ百回」
遠回りした二人の初恋。
巡り合わせのように、長い時間をかけ、やっと成就した恋。
一緒にいるのが当たり前過ぎて、思い出があり過ぎて、その分お互いの心に踏み込むのに、時間は必要だった。
気づかせる為に。
先伸ばした想い。
気づかないフリ。
閉じ込めた想い。
家康とひまりのすれ違い。
真っ直ぐな愛と、真っ直ぐな心。
それが隔て…そして今は繋がった…。
『時を越える力が現れても、決して愛する人を、自分を見失わないで』
戦国姫は、
伝えたかったのかもしれない。
そう、自分自身に……。